オシャレな資料でなくてもOK?-実用向きな提案資料とは-
クリエイティブの提案資料は、オシャレでなくてはいけない。
そう思っていませんか。
オシャレな資料を作ろうとすると、考えることはたくさんあります。
資料のためのデザイン、配色、フォント、余白、画像の品質、トンマナ…、デザイン制作物として資料を見ることになります。
しかし、提案資料の一番の目的はビジュアル的に美しく見せることではなく、情報を分かりやすく伝えることです。
今回は、提案資料のデザインについて改めて考察したいと思います。
目次
提案資料は目的によってデザインを選ぶ
次の2つの提案資料は同じ内容を説明しています。どちらの方が良くみえるでしょうか。
Aの資料
- 1枚当たりの情報が少ない
- 枚数が多い
- 余白を活かして強調している
- 図がシンプルである
Bの資料
- 1枚当たりの情報量が多い
- 枚数が少ない
- 画面全体を活用している
- 複雑な図を使用している
どちらにもメリットデメリットがありますが、今回は提案書としてBの資料を勧める理由を解説します。
シンプルなデザインでは情報不足
一般的にスライド作成のポイントとして、1つのスライドに1テーマいったことがよく挙げられます。 視覚的な情報を絞ることで、読み手に負担なくストレートにメッセージを伝えることができるからです。 このような考え方は、プレゼンテーションの時に、画面にスライドを映しながら口頭で説明するという状況を前提としています。
一方、提案資料としてはどうでしょうか。
実際の現場では、印刷して手元で見られるようにし、資料自体を送付してお客様にじっくり読んでいただくことがほとんどです。
大規模なプロジェクトで、現実的にスケジューリングされた企画であればあるほど、情報量が膨大になります。
シンプルな資料にするために1枚ごとにテーマを絞って書いていくと、枚数が増えるため印刷に向いていないのです。
また、デザイン性の高いスライドを作るには時間もかかります。
提案はスピード感も大事なので、細かなデザイン調整よりいかに早く資料を仕上げるかといった点も考慮すべきです。
提案資料の場合は、プレゼンテーションの目的とは切り離して考える必要があります。
目的に合わせてデザインを使い分けている例
ある製薬メーカーが開発した殺虫スプレーは「脱皮缶」方式を採用しており、フィルムをはがすとシンプルなパッケージに変貌します。
「家の中で虫の絵を見たくない」、「家のインテリアに合ったものがいい」という消費者のニーズをくみ取った結果、このようなデザインとなったのです。
では、なぜ最初からシンプルなデザインにせず、コストをかけて2重のパッケージにするのか。
それは、お店で商品を手に取ってもらうためには、特徴が一目でわかる派手なパッケージで商品を訴求する必要があるからです。
家ではインテリアになじむシンプルなデザイン、お店では商品の訴求に効果を発揮するデザインというように、
お店と家では目的が異なるため、2つのパッケージを使い分けているのです。
先ほどのAとBの資料は、伝えている内容は同じです。
しかし、AとBの資料を比較すると、Aの資料に対し、Bの資料では提案資料として以下のようなメリットがあります。
- 1枚あたりの情報量が多く、印刷枚数削減になる
- 詳細な図解により一画面で全体像が把握できる
Aの資料はシンプルで1スライドごとに1テーマを説明するプレゼンテーションに適していますが、 情報量が多く密度の高い提案では、Bの資料のほうが実用的といえます。
提案資料作成のポイント
提案資料作成のポイントは次の3つです。
- 画面全体を使う
- 文章を短くする
- 図で説明する
順に説明します。
画面全体を使う
画面全体のスペースを有効活用します。
1画面に収めることで、一度に把握できる情報が多くなり、関連する内容が理解しやすくなります。
複数の情報を入れるには画面を分割したレイアウトにします。
情報が単調になると読みづらいので、見出しや図などで強弱をつけましょう。
文章を短くする
一文が長い文章は、読み手にとって負担になります。
一文を短くするか、一定の長さで折り返すと読みやすくなります。
文章を短くするために、省略しても情報が成立する部分があれば削除します。
例えば、以下のような表現は省略が可能といえます。
- 見出しで内容のテーマがすでに説明されている
- 同じ内容を別の表現で繰り返している
図で説明する
文字だけが書かれた資料は、単調なため集中力が必要になり、読み手にストレスを与えます。
一方、図や画像などのビジュアル要素は一目で内容を把握でき、読み手の関心をひきつける効果があります。
可能な限り図をいれて説明しましょう。
視覚的な情報があると直感的に理解しやすくなります。
ライティングの質と図解の活用がポイントです。
まとめ
クリエイティブの提案資料は、資料自体がオシャレでないと説得力がない、と思うかもしれません。 もちろん資料がオシャレであることは、ブランディングとして重要です。 プレゼンテーションでインパクトを与えたいときなど、シンプルなスライドでメッセージを伝える方が良い場合もあります。 一方、大規模プロジェクトの提案資料は「詳細な情報を伝える」ことが目的なので、クリエイティブとしての完成度より、情報量と機能性の方が優先度は高いと考えています。 資料は目的によってレイアウトを使い分け、効果的に伝えるデザインを目指しましょう。
UI/UXにこだわるWebデザイナー。コーディングを想定してデザインしていくのが得意。